44.シャープ崩壊(日本経済新聞社・日本経済出版社)
何か1企業にフォーカスをあてた本を読みたいと探していたところ、たまたま目にしたこの1冊。シャープが鴻海に買収されたのは少し前の出来事にはなるが、歴史を学ぶという意味でも手に取ってみた。
<要約>
かの名門企業、シャープがいかに腐敗し、いかに転落し、結果鴻海にかわれることにまでなった経緯しるしている。おそらく、日経記者が頼れるだけの人脈を頼って熱血取材したことがうかがえる。情報量もものすごい。
物語はシャープの黎明期までさかのぼる。本書の冒頭には重要登場人物というページがあり、歴代の社長や役員などのプロフィールが記載されている。さながら小説のようだが、これらがすべて事実に基づくというところが興味深い。
結局、シャープの腐敗は内部の歪んだ権力争いにつきる。歴代経営者の経営手腕不足ももちろんあるだろうが、その根源は権力争いにあったのだろう。まさに「人災」だ。
BCG、PWCなどコンサルティング会社が5社入っていたという記述も興味をそそる。十分流し読みできる量となっているため、Kindleでささっと読み流すことをおすすめしたい。
43.事業計画を実現するKPIマネジメントの実務 PDCAを回す目標必達の技術(大工舎宏・日本能率協会マネジメントセンター社)
<要約>
世の中の解説書には、読者にわかりやすく読みやすいように書かれた解説書とただマニュアル的に項目と要素を並べただけの退屈な解説書があるが、本書は後者だ。
たしかに、タイトルの通り、KPIマネジメントの実務を行う方は手元に置いておきたい1冊だろうが、そうでない人はおそらく読んでも眠くなるだけだ。(実際、小生も眠くなった。)
以前ご紹介した、「最高の結果を出すKPIマネジメント」は間違えなく前者だ。
「KPIマネジメントとは?」「大局的な要諦は?」を知りたい方は、「最高の結果を出すKPIマネジメント」を、「実務的な設定・運用方法は?」を知りたい方は本書を読むべきだろう。
一応要約しておくと、本書で伝えたいことは
前期の計画と実績の総括、今期の市場競合分析を踏まえた上で、各部門ごとの戦略目標→KGI→プロセスKPIを設定。それをベースに、特に重要と思われる取組テーマを抽出し、アクションプランを設定。全社の目標と部門の目標がつながった"戦略マップ"を作成するとともに、KPIの運用ルール(会議体制、振り返りの方法など)を設定する。
設定したKPIを用いてPDCAをまわしていき、さらにKPIの精度をあげていくことの手順が示されている。
事業計画を実現するKPIマネジメントの実務 PDCAを回す目標必達の技術
- 作者:大工舎宏
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2018/01/26
- メディア: Kindle版
<本文抜粋>
- 必達目標の明確化
「期待値」としての目標とは別に「これだけは絶対に死守するべき水準」としての必達目標を合わせて設定するケースがある。(中略)市場での競争環境、全社的観点からの必要利益、他の事業との関係などから、「達成可能かつ高い目標」「勝てる目標」であることが望ましい - 定量化が難しい目標については、"いついつまでに行う"という期限の目標でも良い
- KPI設定の面からは、部門として達成すべきこと、行うべきことの整理が主であり、部門のメンバーである各個人がなにを行うかは、その結果整理できることと捉える
- 計画と財務面の結果の開示だけではなく、施策の実施結果・実施効果なども開示していくことで、結果に対しての要因分析や施策の妥当性の検証などをより充実した形で示すことができます。
42.最高の結果を出すKPIマネジメント(中尾隆一郎・フォレスト出版社)
<要約>
リクルートの最前線で長年活躍した筆者が、KPIとは何か?から、実務上での設定方法、管理方法までを丁寧に解説した1冊。ある程度分かっている人は序盤退屈かもしれないが、中盤~終盤は価値の高い情報が並んでいる。
KPIはKey Performance Indicatorの略で、KGI(結果指標)の先行指標。
つまり、売上・利益など、最終的に達成したい目標(KGI)を実現するのに必要なプロセス(CSF・KSF)を特定し、その最重要プロセスの数値目標がKPIにあたると。
当然、KPIは複数ではなく、シンプルな数値が1つあるだけ。
われわれが目標設定するのと同じく、KPIも、KGIの目標と現状のギャップの確認から紐解いていく。
設定の際には、現場のオペレーションを加味しているか、つまり、実現可能性があるかまで踏み込んで考えることが重要。また、設定後は全従業員への徹底、すべての意思決定をKPIに基づいて判断できる、という状態が理想。
<本文抜粋&所感>
- KPIはKGIの先行指標
- 最初の2つのステップはKGIの確認と現状とのギャップの確認
- KPIマネジメントは、理想的には、全従業員のものであることが望ましい
→KPIは管理職以上のものと思われがちだが、現場の方々に共通認識をもってこそ機能するものであり、それを徹底していくべき - 起案者は起案内容に加えて、その施策の「振り返り」を「いつ」「誰が」「何を」「どうやって」実施するのかを併せて起案
→作りっぱなしにするのではなく、PDCAを回せる体制を併せて構築しておく必要がある。 - (KPI管理について)私が営業組織を担当していたときに実際に選択したのは、受注率を上げるというもの
→数打てばあたるというが、筆者は打席数を増やすよりも打率を上げる方が簡単だという。 - 人生100年時代を健康的に長生きするためには、筋肉量を維持することが重要
→全く関係ない話題が出ていたが、これはLIFE SHIFTでも語られていた内容。つながってくるね。とにかく運動はマジで大切っぽい。 - 前期数値=前々期数値±特殊要因
→目標数値を設定するときに便利。 - 何をするのかを明確にする際に、現場が実際にオペレーションできるのかを加味して検討することが重要
→アクションプランを机上の空論で終わらせないために、現場レベルでの落とし込みが大切 - 最近流行りのホラクシー経営をしている会社では、すべてのコストを全従業員が閲覧できるようにしているそう
→ホラクシー経営とは、組織における肩書や役職をなくし、トップダウン型の意思決定から分散型の意思決定に移行させる経営組織のことを言うらしいです。いずれにせよ、すべてのコストを閲覧できるようにするのはすごくいい考えですね。各事業でコスト削減しようというインセンティブにつながる。 - KPIマネジメントの究極は、すべての判断をKPIに紐づけられるかどうかにかかっています
41.外資系金融のExcel作成術: 表の見せ方&財務モデルの組み方(慎泰俊・東洋経済新報社)
前回引き続き、Excel本をご紹介。
前回記事↓↓
<要約>
モルガンスタンレーや投資ファンド出身の筆者が、Excelの綺麗な見せ方、モデルの作り方にフォーカスして記した1冊。
以前紹介した「外資系投資銀行のExcel仕事術(熊野整・ダイヤモンド社)」に比べ、より財務モデリングにフォーカスを当てた構成となっています。
この本の良いところは、なんといっても練習問題がついている点。Excelに限らず、この手のツール本は読んだだけでは何も身に付きません。読み、実践してこそ初めて見につくのです。
はじめにさっと一読した後、書籍内に記載されているURLより練習問題をダウンロードして、時間があるときにさっとやってみるのが良いと思われます。
外資系金融のExcel作成術: 表の見せ方&財務モデルの組み方
- 作者: 慎泰俊
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2014/04/04
- メディア: 単行本
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<本文抜粋&所感>
- 一目すればその表が何を意味するのかがわかる表こそ、見やすい表
- 表のタイトルには2割大きな太字を使いましょう
- 行のタイトル項目は2割小さい文字サイズにして、太字にしてあげると、全体の見た目がシャープ
- 見やすいExcelの表を作るための訓練として一番良い方法は、世の中の色々な表を見て、見やすいト思ったものがあったら(中略)印刷したものをスクラップノートに張り付けておくこと(中略)それらの表がなぜ見やすいのかを言語化しながら学ぶと良い
- Alt+Shift+Tabで開いている別のExcelファイルへ移動
- 「*」はワイルドカードで、どんな文字列であっても「=」の後に続くものはすべて置換の対象
- 実績値からKPIを求め、そのKPIを前提として将来財務諸表を作成
- 手元にある過去データはすべて値だけになっていますが、これを値と数式で構成し直す
- キャッシュフローは、(a)「損益計算書上の損益から、現金支出を伴わないものを足し戻すこと」と(b)「損益計算書上に反映されない理由により生じるキャッシュフローの変動を織り込むこと」の2つの計算を行う
減価償却費とのれん償却費は実際の現金支出を伴わない項目ですので、これらの項目を足し戻す - 運転資本の増減による現金増減
=流動資産の減少額+流動負債の増加額 - キャッシュフロー計算書で求めた毎期末の現預金を、BSにリンクさせることにより、ついにPL、BS、CF計算がすべてつながる
- 店舗数は、期中平均(今期と昨期の店舗数の平均)を用いる
- KPIの算出においては、単に機械的な計算をするだけでなく、その裏側にあるビジネス論理に対しても想像力を働かせてこそ、本当に良いモデルを組めるようになる
- BSに関するKPIでは、売上債権と棚卸資産が売上に対してどれくらいの比率であるのか、買入債務が食品原価(仕入額)の何%なのかを計算
40.ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術---数字力が一気に高まる基本スキル(熊野整・ダイヤモンド社)
今や業務でExcelをつかわないというビジネスパーソンは少ないのではないでしょうか。今回と次回の2回にわたって、Excel本をご紹介。
<要約>
Excelのすべてがここにつまっています。詳しくは本文抜粋参照。
かなり実務的な本ですが、個人的にはこちらの方が次回紹介する「外資系金融のExcel作成術」より基礎的な内容が書かれています。
以前紹介したExcel本とあわせてご紹介しておきます。
ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術???数字力が一気に高まる基本スキル
- 作者: 熊野整
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/02/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (4件) を見る
<本文抜粋&所感>
- 相手に少しでも良い印象を持ってもらうためには、資料の内容は言うに及ばず、見た目まで完璧を期すというのが投資銀行のカルチャーです
→コンサルより投資銀行の方がこだわりが高めな模様。個人的には結構こだわりたい派 - 入社2年目くらいまでは、作成した資料を上司に見せても、フォーマットが一発でOKになることはまずありません。3年目でようやくフォーマットが一人前。4年目になると、1年目、2年目の社員を鍛える側になります
- 正しいフォーマットでは、行の高さを「18」にします
→これは徹底できていませんでした。これからは気を付けていきまっしょい! - 数字が入っている列のタイトル文字に限っては、数字に合わせて右にそろえます(N/Aも同様に右揃え)
- 数字の変化をチェックするときは、線にして見るというクセを身につけてください。かなりチェック能力が上がります
→グラフにしてみてみること。このひと手間が身を救う - 焦って作ったエクセルほどミスが多くなる、というのは間違いのない事実です。時間にゆとりを持って計算をしていかなければ、絶対にミスが起きます
→上司も部下がエクセルを触っている時は焦らせてはだめだ。本文中にも記載があったが、部下側も意識的にまとまって集中できる時間を確保し、モデルに向き合うこと - 2人がチェックするときの大事なポイントは、エクセルのファイルを自分たちが直接いじるのではなく、エクセルの計算担当者に修正すべきポイントを全部フィードバックし、直させること
- 計算ミスが起きるのはエクセルのスキル不足もありますが、計算に取り組む意識の問題であることも多い(中略)エクセルを使って収益計画や企業分析を行うときには、「過去との比較」「類似企業との比較」の質問をするのが効果的
→機械の様に数字を作るだけでは、AIにとってかわられます。数字の意味を考えることが一番価値を出せるところ。曲がりなりにも、常日頃考えるべき - エクセルはあくまでビジネスに必要な計算のツールにすぎません。エクセルは計算したら終わりではなく、最終的な計算結果を自分の言葉でしっかり説明できるようになって、初めてエクセルの計算ができたことになる
- 表の端に「e」を追加
39.ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ(山内 祐平,森 玲奈,安斎 勇樹・慶應義塾大学出版会)
かつて、「14.ワークショップデザインーー知をつむぐ対話の場づくり」にてワークショップに関する書籍をご紹介した。
今回は14と同様ワークショップつながりで読んだ書籍をご紹介。
<要約>
東京大学大学院情報学環の助教授、特任教授の筆者が、学問的側面からワークショップについて語った1冊。
学者が書いていることもあって、正直実践よりだいぶ学問寄りとなっている。
ワークショップの実践力をつけたいと思っている読者の皆様は読まない方がいい。ワークショップの学問的意義を研究している情報系の学生(そんな人いるのか、、)向けの参考文献という印象をうけた。
一部、実践にあたってのテクニック的な記載もあったが、正直14で紹介した「ワークショップデザイン」の足元にも及ばない。
「要約」と書きつつも、内容が全く頭に入ってこなかったため、要約となっていないことにご容赦いただきたい。
<本文抜粋&所感>
- ベテラン実践者は依頼内容を丁寧に確認した後、まずコンセプトを固め、プログラム全体の構造を決定し、メイン活動から細部の作成へと段階を踏んで企画することが多い
→本書内ではベテランvs素人の比較でその差分をポイントとしてあげていたことが多い。上記の内容もその1つだが、考えてみれば当たり前のことではある。ワークショップに限らず、本を書くにしても企業戦略を立案するにしても、一番大きなコンセプトを決定してから細部の検討に入っていくのは必要条件だ。 - 心理学者ミハイ・チクセントミハイ(1934-)は、人間が活動に没入し、楽しさを感じている状態のことを「フロー」状態と名づけ
→勉強も仕事もトレーニングも、この「フロー」状態にいかに早くもっていけるかがカギ。個人的には作業興奮が大切だと思っていて、まずは作業を始めてみることが先決。気がのらないときは5秒ルールを使えばいい。5秒ルールは以下の動画が印象深かったので余裕がある方はcheck!
- 反省的思考とは、過去の経験と関連づけながら、ある状況で学んだ知識や技能を、後に続く未来の状況を理解し、処理する道具として意味づける行為である。デューイは、リフレクションが十分に確保されて初めて、質の高い経験学習がなされることを主張した。
→デューイかボーイか知らんが、昔の哲学者は本当に真理をついた名言を残す。日々の仕事においてもこれはとても大切なことで、日記をつけることでその日を振り返るだけでも日々の積み重ねを作ることができるのではないだろうか。 - (ファシリテーターは)事前に決めていた台詞を一言一句違わずに読み上げるように進行するのでは雰囲気が堅くなってしまう。ファシリテーター自身もリラックスし、参加者と自然な形でコミュニケーションを取りながら進行することが望ましい
→珍しくテクニカルなことを書いている部分だが、さらっと難しいことを言うなよという感じ。これができそうでできないのが難しいところだが、大事なのは楽しもうという気持ち。緊張すれば頭が真っ白になって何も話せないという悪循環に陥る。 - ワークショップ実践者は過去への省察を通じて自身の仮説を練りあげながらそれを具体化する方法を検討していることが明らかになっている
→だから当たり前かて。何事も経験から多くを学び、自分の血と肉にしていくことが大切ということか。
38.死ぬこと以外かすり傷(箕輪厚介・マガジンハウス社)
<要約>
幻冬舎編集者であり、自身も箕輪編集室というオンラインサロンを主宰するインフルエンサーである筆者が、自身の仕事観について熱く語る。
筆者はホリエモンの「他動力」や落合洋一の「日本再興戦略」など巷で話題のビジネス書を生み出しており、これらの筆者とのつながりも深い。
少し宗教チックな部分もあるが、ここ1年でブレイクしたという筆者の成功の秘訣が凝縮されており、客観的にみても真理となることが多く書かれている。(以下抜粋参照)
この手の本の内容をすべてうのみにすることは危険だが、自分にささるエッセンスを抽出して仕事に生かしてみるのが◎
<本文抜粋&所感>
- 自分はいった何をすればお金をもらえるのだろうか。市場にさらされて初めて自分の値札を意識した。まずはWebメディアに僕の実績を売り込んで記事を書かせてもらった。1本3万円。編集者養成講座などで話すと2時間5万円。(中略)月収は20倍近く上がった。しかし僕の実力が20倍になったわけではない。僕がしたことは、無謀にも市場に出て行き、自分の腕一つで稼がなければならない状況に自分を追い込んだだけだ。
→昨今副業が話題になっている。世間の人はみな、何かをしたいと思っているはずだ。しかし、実際に行動に移せている人は、自分も含めほとんどいないだろう。筆者はとにかく行動し、とにかく量をこなすことを説く。たしかに真理だ。かの天才ピカソも誰よりも作品を多く生み出したからこそ天才と言われている。 - 世界がこれからどこに進むかということに興味を持つということは、世界を自由に生きるために必要なことだ。
→昨今では世界中の情報が簡単に手に入るようになっている。それを生かすも殺すも自分次第であるとよくわかる。資本主義社会に生きる以上、世間の動向を感じ取り、どこに商機があるのか?を考える姿勢は大切。そのためにまずは情報に触れ、少しでいいから考えるところから始めよう。 - 制約がイノベーションを生む。追い込め。ダラダラと居心地の良いスピードで仕事をしていては、この世にあらざるものは作れない。(中略)絶対に無理、どんな方法を使っても不可能だというくらいの負荷を自分にかける。すると苦境を乗り越えようという防御本能が芽生え、進化する。
→身に染みる。ゆっくりやってもそこそこの仕事しかできない。自分で追い込み、負荷をかけて集中力をあげる仕事術。 - 「やります」「行きます」と言うようにするのだ。これだけで行動の量とスピードが飛躍的に上がる。
→一律にYesマンになるのはどうかと思うが、Noの量を多くして可能性を狭めてしまうのも一考。 - 「痩せます」と宣言すれば、その瞬間から何キロまで絞るのか、そのためには週何回トレーニングするのか、食事制限はどれくらいするのか、具体的な行動も決まる。
→これも身に染みる。。小生も最近太り気味なので、早速目標体重とアクションプランを策定して、今日から行動に移したいと思う。