3分リーディング

3分間で1冊の本の内容を把握できるように書きます。雑誌についてもたまに。

18.未完の流通革命 大丸松坂屋、再生の25年(奥田務・日経BP社)

昨日紹介した本に関連して、今日も小売りに関する本をご紹介。

<要約>

前大丸社長がその半生と百貨店業界の実情の変化を記した1冊。
奥田さんは百貨店学を学びにNYへ留学されるなど、非常に先見の明がある経営者で、旧態依然型の経営者が多い日本では非常に珍しいタイプ。
実際大丸時代には苦労されたようで、周りからは「宇宙人」と呼ばれていたそう。
しかし、自らがNYで学んだ理論や経験から考え抜いた信念に従って改革を進め、見事大丸を高収益企業に生まれ変わらせる。言葉も非常に巧みで、どんどん読み進めることができる1冊です。
やはり思うことは、経営にウルトラCはないということ。
いかに企業の現状を正確に分析して、シンプルだけど正しいアクションを愚直に遂行することができるか。ここにかかっているのだと思います。
様々なステークホルダーが渦巻く経営の現場では、ともすればなぁなぁで終わらせてしまう事柄が多いはずです。というか日本の経営者のほとんどは多くの部分をなぁなぁで終わらせているはずです。それらをデータに基づて徹底的に管理する。そして社内を敵に回すことがあっても、リーダーは愚直に正しいアクションを取っていく。こうすることで、良い企業が生まれるのだと思いました。

未完の流通革命 大丸松坂屋、再生の25年

未完の流通革命 大丸松坂屋、再生の25年

 

<本文抜粋&所感>

  • (若いうちは)随分たくさん本を読みました
  • とにかくアメリカに行って最初の一年ほどは本当によく勉強しましたね。寝る時間と食事の時間以外はすべて勉強していた(中略)ニューヨークでの大学生活で一番印象が強いのは、摩天楼の向こうから朝日が差してくる中、勉強していたという光景
    →成功者は例外なく若い時に死ぬほど勉強している/働いている。突き抜けなければいけない。
  • アメリカの)プリスムでは、バイイングラインとセリングラインの調整をする担当者を置いていました。ストアコーディネーターという名称
    仕入れと販売が対立するのは小売業の常。この事例は1つのベンチマークになるかもしれない
  • 研修でもメトロポリタン美術館の館長といった人たちが講義をしてくれる。理屈だけでなくて、ここまでして感性を磨かないと、エキサイティングな売り場は作れないということ
  • オーストラリア人はものすごく効率的に働いていたんですね。朝は必ず時間通りに出社し、定時を過ぎたらクモの子を散らすように帰っていく。(中略)昼食時間もムダにせず、サンドウィッチ会議を開いて仕事を進めていく
  • なぜ経営者は決断できないのでしょうか。最大の要因は、トップに十分な覚悟がないためです。(中略)改革を進めるには、いろいろな非難を受ける覚悟が必要です
    →改革には明確で実行可能で効果があるアクションプランと、それを確実に遂行するリーダーが必要。いくらコンサルタントが提案したところで、それを実行しきる人がいないと意味がない。
  • こんな状況でローコスト経営を実現できるわけがありません。社員一人ひとりの仕事内容を見直す必要がある。そう判断し、「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」を導入することにしました
    →重複したり俗人的になっている業務の標準化の1つのベンチマーク
  • 営業、後方、外商と立て続けにメスを入れ、百貨店ビジネスをあらゆる角度から見直し、可能な限り業務の標準化とシステム化を進めていきました
  • バブルが崩壊した後も、百貨店各社は過去の夢に酔いしれている状態で、改革に着手するどころか思考停止に陥っていました。あまりに強烈な高度経済成長期の成功体験が変革を阻んでしまったのです。
  • 大丸のカード会員数が伸びているのか、また売り上げを支えるのがカード保有者であるリピーターなのか、新規顧客なのか。新しい店舗に必要なこの二点は細かく把握
  • 人員を減らしても、お客さまに満足いただけるサービスを提供できる
  • 通常、ファッション商品に関しては百貨店は売上高の25~35%をブランド側から徴収しています。けれど駅ビルやショッピングセンターの場合、取引形態は百貨店と違い、大半が賃料を支払うスタイルです。(中略)商業施設側が徴収する賃料は売上高の10~15%程度です。