11.図解入門 よくわかる最新SAP&Dynamics 365 (How-nual図解入門Visual Guide Book)(村上均,池上裕司・秀和システム社)
更新頻度鈍っていましたが、今回は少しテクニカルな1冊を紹介。
とはいえ、ものすごく踏み込んでSAPを解説しているかというと、そういうわけではないため、入門書として適切な1冊だと思われます。
<要約>
代表的なERPソフトであるSAPとDynamics365に関する基礎知識と、経理・経営者・監査人・情シス担当者・SIerそれぞれに向けた逆引き辞典的なTipsを集約した1冊。
基礎知識部分に関してはERP完全初心者の小生でもすらすら読めるほど簡単な内容。裏を返せば、そこまで踏み込んだ話はされていないため、より詳細な知識を得たい人にとっては物足りないかもしれないが、入門書としては最適な一冊。
このようなERPを扱うにあたっては簿記2級程度の会計知識が前提となるため、ERPにかかわる人たちは簿記に関する知見は相応に持っておく必要があるかと。
話はそれますが簿記に関連した話をすると、個人的には株式会社に勤める全ての企業人は簿記を学ぶべきだと思っています。自分が労働を提供し、その対価として給与を得ているこの資本主義社会の根幹をなす会計・簿記の知識は必ず役に立つときがくるかと感じてます。
ちょくちょく章の間に入っている筆者のコラムも、彼の人生観を垣間見ることができて良いです。
図解入門 よくわかる最新SAP&Dynamics 365 (How-nual図解入門Visual Guide Book)
- 作者: 村上均,池上裕司
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2017/11/25
- メディア: 単行本
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<本文抜粋&所感>
- ”ERPのメリットは、なんといっても、いろんな切り口でデータを集計・加工しても、それぞれの帳票間の数字が一致していることです”
→そもそもなぜERPを導入する必要があるのか?に対する一番の答え。 - ”ホールディングス会社であれば、支配下の子会社のERPシステムを1つのシステム上に統合することでグループ間決済の仕組みや、連結上の取引相殺などが瞬時に行える”
→昨今活発なM&A時にも重要な知識。 - 主な経営指標の例:流動比率・・・200%以下だと運転資金不足になる恐れあり
→会計知識tips - 主なマーケティング指標の例:問い合わせ件数、訪問件数、商談件数、受注見込み件数・金額、受注件数・金額
→KPI分析におけるtips - 大手が提供するクラウド:MicrosoftではAzure、GoogleではGCP、、、
→Azureは知っていたがGCPは初見であったため記載 - ERPのデータベースは、RDB(リレーション・データベース)型を採用しています
→連結会計監査においては親会社のSAPから子会社のデータも拾えるのかと - 各社ERPの開発言語:SAP=ABAP、Microsoft=X++、Oracle=Java、C、C++
→各社によって使用言語が異なる。プログラミングの勉強したくなってきた - ERPの導入課題
✔ERPパッケージを使用するユーザー数を明確にしなければなりません
✔購買・在庫・生産、販売・会計の各業務を一緒に導入するビッグバン方式か先に会計だけ導入しておく方式かを決めておく必要がある
→新たな発見。このような専門用語は覚えておいて損はない - リアルタイム経営を目指す場合は、標準原価による原価を取り入れて処理(中略)ERPパッケージでは、この標準原価計算を前提
- 決算修正期間に関して、SAPは13~16月欄を使用することができる
- 外貨評価の問題に関する会計上の仕分けの起こし方は2種類
①切り離し方式:未決済明細上の金額(円貨)を月末レートで計算した金額におきかえる方法
②洗い替え方式:常に発生時点と評価時点の為替差額を計算して(中略)為替差損益を計上 - 出荷基準に関して、IFRSでは納品基準または検品基準で売上の計上が必要
→IFRS検定なるものが存在 https://www.ifrs-kentei.com/ - 賃率は、社員、または、技術者のランク別に、「年間の総人件費÷年間の総労働時間」で計算したものを用いる
- 月次請求の問題:海外では、都度請求が基本
→日本は月末締めが通例だが、ここに海外との差が。やはりERPにおいて会計知識を持っていることは重要。全国のSAP導入コンサルタントの方々は会計知識をお持ちなのだろうか。 - ERPパッケージでは、通常、実績の入力作業を軽減するために、バックフラッシュという機能が用意されている。
→自動で製造指図書に実績が入力されるシステムのことのようだ - 倉庫間の在庫の移動方法:移動もとで相手の移動先倉庫に出庫と同時に入庫させる方法をワンステップといい、移動先で到着した事実に基づいて入庫処理する方法をツーステップという。
- 後入先出方はIFRSでは認められていない。
→後から仕入れたものを先に出荷するというニュアンスなので、古いものはたまっていくスタイル。石油とかこの方式だったと思われる。 - SAPもExcelと親和性が高い(P158)
→MOSとの親和性を売りにしているDynamicsもこの点ではSAPとの差別化が図れていない - (ERPでは)キャッシュフローのシミュレーション機能が用意されている
→キャッシュフロー計算をわざわざ行う必要がないし、ニーズもないのでは - ドイツのホッフェンハイムの監督は、SAPのサッカー分析ソフトウェアを使いこなし、(中略)チームを変身させた
→映画マネーボールもそうだが、スポーツにおけるデータ活用は大変興味深く可能性がある分野である一方で、イチロー選手が引退会見で言及していたように選手がプレーについて考えなくなるリスクを含んでいる。 - 内部監査人は、一般に社内業務処理規定などに照らし合わせて、業務が遂行されているかをチェックする
→「内部統制」という言葉はよく耳にするが、内部監査人の役割はこういうこと - ローカルルールとして国ごとの要件が存在するものに、消費税、源泉徴収税、減価償却計算がある
→グローバル企業の財務諸表を見る際に参考になる - (コラム)負けた時の悔しさをひきずらないために、コーピング術(忘れる、次の試合への切り替える)を使う
- (コラム)人は誰しも過去の失敗や不幸に囚われ、また未来への不安に戸惑います。しかし、誰も過去や未来を生きることはできず、今を精一杯生きることしかできません。
→すっごくいいこと言うじゃん!!! - クラウド化によって短期的にはSIerの利益が減少するが、会員数が増えれば長期的には収益増加につながる
→クラウド型商品におけるSIerは会員数でチャージしているのか...! - 用語
データマイニング:データのパターンや傾向から問題の糸口を見つける
MTS:Make To Stockの略で、見込み生産のこと
MTO:Make To Orderの略で、繰り返し受注生産方式のこと
MRP:Material Requirements Plannningの略で、資材所要量計画のこと
J-SOX:金融商品取引法(内部統制の基本的要素を定義)
EAI:Enterprise Application Integrationの略で、記号アプリケーション統合のこと
RFP:Requested For Proposalの略で、提案依頼書のこと