30.ただいま授業中 IFRSがよくわかる講座(有限責任監査法人トーマツ IFRSアドバイザリーグループ・かんき出版社)
今日は会計関連でもう1冊ご紹介。
<要約>
IFRSって何?というレベルの人から、IFRSのいろは~これまでの会計基準との差まで包括的に解説した1冊。
IFRSに移行することで、海外投資家からのファイナンスが容易になる、つまり、資本調達コストが安くなるというメリットがある一方、利益の表示方法やコストの認識方法が変わる等、従来の会計基準から大きな変更を伴うことになるため、経理部を中心とした社内チームを立ち上げた一大プロジェクトとして運営していくことが必要になります。
実務書というよりも、基本的な考え方や情報をうまくまとめている良書となっていますので、「IFRSって聞いたことあるけど、よくわからない」という人におススメです。
<本文抜粋>
- IFRSは原則主義で、細部については規定していない
→各国、各社で詳細を詰める必要がある - IFRSで作成が求められる財務諸表は、①財政状態計算書、②包括利益計算書、③持分変動計算書、④キャッシュ・フロー計算書の4つです。
このうち、財政状態計算書はいわゆる貸借対照表に該当しますが、呼び方が異なるだけで、今のところ内容に大きな違いはありません。持分変動計算書およびキャッシュ・フロー計算書も同様です。一方、包括利益計算書はいわゆる損益計算書に該当しますが、「損益」が「包括利益」となっていることからもわかるように、計算される利益の考え方が大きく異なっているのが特徴 - 「包括利益」は「当期利益」と「その他の包括利益」(会社が保有している資産等の時価等が変動したことによる利益)の2つから構成(中略)後者は「資産の含み損益」のようなもの(中略)資本取引の変動は包括利益には含みません
- IFRSでは、ある取引が次の5つの要件を満たした時に、それを「売上」と見なす
①リスクと経済価値が移転していること
②継続的な管理上の関与がないこと
③経済的便益が流入する可能性が高いこと
④信頼性をもって収益を測定できること
⑤信頼性をもって原価を測定できること - IFRSではポイント制度に係る具体的な会計処理を定めています。そこでは、100円の商品を販売して5円のポイントを付与するということは、そもそも当初から100円で販売する気がなかったと考えているのです。(中略)高率のポイントを付与している家電量販店などでは非常に大きなインパクトになり、IFRS摘要初年度は、前期に比べて売上金額が激減することが予想されます
- IFRSでは固定資産の耐用年数は、「経済的耐用年数」に基づいて決定します
実務上は、例えば過去における同種の資産の利用期間を調査・分析して耐用年数を見込む - IFRSでは、有給休暇は今年働いた社員に対して来年に与えられる当然の権利であるので、来年の労働時間は今年の労働によって付与された有給休暇を控除した日数が正常であり、給料はその労働時間に対して支払われていると考えています
- (のれんについて)IFRSでは買収する側にとって重要かどうかではなく、その無形の価値が一般的に市場でどれだけの価値があるかが判断の基準
- IFRSではのれんの償却が認められていない
- IFRSは「会社が将来どれだけのおカネ(キャッシュ・フロー)を生み出すのか」を会計上表現しようとしている
→DCF法に似た概念なのですね